それだけなのに
小さな窓の中に きみを見つけた春
静かに本を読んでいる ただそれだけなのに
短い休み時間に いつもここへきて
同じ席で読んでいる
ただそれだけなのに
気になって気になって またのぞいてしまうんだ
きみは一度も顔をあげず
ぼくに気づくはずもない
図書室の窓の向こうには
散り始めた八重の桜が風にゆれている
偶然だったんだ きみを見つけたのは
向かいの踊り場から見た ただそれだけなのに
昼休みも放課後も またのぞいてしまうんだ
きみはいつも本に夢中で
ぼくが見えるはずもない
図書室の前の廊下では
きみの邪魔をしないように息をひそめてる
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